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ルートの長大化に求める困難性

  

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↑コレも読んでみて下さい。



とても長い文章ですので、ノーコメントで大丈夫です(笑)
なんでブログに書いたの?とか聞かれると困るのであります。



ルートの長大化に求める困難性
              高島 誠



 一般に使われている<継続登攀>という用語はおかしなことばである。そのまま英語にして<コンティニュアス・クライミング>としたら、スタカットに対するアンザイレンしたままの登攀ということになってしまう。では英語なら、われわれの使っている意味での<連続>は、たぶん<サクセッシブ>ないし<コンビネーション>くらいのとこだろう。これで実際使えるのかどうか、友人の米人登山家に問い合わせてみたが、「ルートの組み合わせは行うが、特別にそれを名詞化して登山用語としていない」といってきたし、私の教え子でカナダに留学しカナダ・アルパインクラブ員になっている女の子が一時帰国したので、この件を尋ねてみたが、やはり同様の答えであった。
 
だからこの<連続登攀>なることばと現象は、どうもこの国独特のもの、しかもわりあい最近のことであって、誰かが漠然と使っているうちに、なんとなく普通名詞化した登山用語なのだろう。いかにも日本的な定着のしかたではあるが、最初に述べたようにいささか不正確なことばであって、「継続」とか「組み合わせ」の方がわかりやすいと思う。
 
 岳人が「記録速報」という欄を設けたのは昭和34年であった。既に11年たったが、その年の5月号(133号)にはこの欄に<積雪期バットレス、第四尾根ーー中央稜連続登攀>との見出しで<連続>の語を用いている。だから、この用語は新しいとはいえ、もう10年以上も前から使っていたらしいが、一般には例えば<チンネ中央チムニー左フェイスより右上フェイスGチムニーCdクラック>だとか<剱岳池ノ谷右俣奥壁・右岩稜初登攀>といった内容は、<連続>でもそういう表現をしていない記録の方が多かった。たぶん編集子もあまり意識していなかったのだろう。この点での見出しの統一はなされていない。以後少しずつこの記録欄にも<連続>の用語が増してきて、このあたりから登山者も<連続>なる語を意識して使い、登りだしているといえよう。
 編集部注 本誌ではルートとルートをつないで登る連続登攀を、コンティニュアス・クライミングの訳語と区別するため、<継続登攀>と呼ぶことに数年前から統一している。

 継続登攀を日本の登山史にのせてみると、登攀のスピード化の結果にほかならないことは容易に見当がつく。私たちがスピードという意味を最初に考えさせられたのは今から13年前、ルイ・ナシュナル、ジュラール・エルゾーグ共著「若き日の山行」(近藤等訳、白水社)が訳出され、それを読んだときであった。

 「…成功するには、なによりもスピードが第一条件だ。これがためには、クライマーとしての卓越した才能と、困難な登攀を充分に経験していなければならず」とか、「…頂上まで抜き出るには丸二日が必要だが、第二登に成功したフレンドとフーラスティエはわずか18時間でこれを完登し…」とか、この本はまるで登山スピード狂の物語としか受け取りようもないくらいだったし、事実ある日本の老登山家はこの本を評して、「絵の展覧会へ行って、会場でいかに速く駆け抜けるかの競争のような登山法」と嘆いてみせたのも覚えている。
  
 しかし登攀のスピード化はヨーロッパの場合、<継続登攀>には容易に結びつかなかった。それだけヨーロッパのルートは長く困難なのであって、ビバークが必要だったものが、ビバークなしになるくらいにすぎない。日本の場合、スピード化はむしろ登山の楽しみをその限りでは減少させたといってよい。技術の向上というより、道具の発達がスピード化の原因になることが多く、登攀の困難度が下がり、二、三時間で終了してしまうルートばかりでは、登ることそのものがイージーな遊戯と化し、午前中に登攀を終え、午後は岩場にトカゲをきめこんでいる若い人たちが多く見られたのも、この時期であった。道具のおかげでスピード・アップできたのを自分の技術によるものと早合点し、ラシュナル式高速登攀と粋がっていた人がずいぶんといたものである。それはヨーロッパのように長いルートが貧しいこの国の岩登りの宿命にも思えた。ゲレンデはゲレンデでしかないのだから。

 しかし、やはり日本人は日本人らしい知恵と工夫をしだす。どうせ暇なら1日1本主義をやめて2、3本稼ごうということになる。私の所属している会でも10年くらい以前から、夏季登攀合宿では、リーダーが適当にルートを組み合わせて、実働登攀時間が5、6時間になるようにしてきた。しかし、この組み合わせを別に<継続登攀>などと大袈裟な呼び方をしなかっただけである。滝谷のようなところでも、どんなに組み合わせても上がったり下ったりを2、3ルートで繰り返すだけだし、それなら三ツ峠の岩場で一日にいくつかのルートを登ったり降りたりするのとまったく同じことであって、とくに滝谷の場合を<継続登攀>などと気恥ずかしくて呼べないだろう。時間短縮の分だけ練習時間を増加しようという、いわば日本人らしい勤勉でせっかちな工夫にすぎないのである。

 本誌が継続登攀をこの時点に取り上げる意義はもっとほかのところにある。曰く、バリエーションルートの長大化による困難化である。どんなにがんばっても、この国の岩山は3000メートルそこそこでしかない。登山最大の喜びである<困難>は年々減少してゆく。いやむしろ、もうこの国の岩場には「困難」が真の意味でなくなっているといってよい。どんなにつるつるの岩壁でも穴をあけ、ボルトを叩き込めば登れるし、そこにハンモックを吊れば可愛い女の子でも眠れる揺り籠と化す。縄ばしごを下げれば子供でも登り降りできる。ダイレクトクライミングなどと得意になるのも2、300メートルの既成ルートならば、いと易いのである。ああ<困難>よ何処へ行ってしまったのか、なのである。それならルートの最大化しか、もうわれわれに残された方法はないではないか。
 
 GNPの増大のせいかどうか知らないが、日本人が海外の山へ出かけるのもずいぶん容易になったし、また数も多い。ヨーロッパの山でさえ、既に「目的」の山ではあるまい。モンブランでもマッターホルンでも、今やわれわれにとってもゲレンデ化しつつある。だから、誰々がヨーロッパのどこどこを登ったときいても、もうわれわれはあまり驚かなくなった。どっちにしろ初登ルートはヨーロッパにないのだから。しかし欧米の山へ行って日本人が一番驚くのはそのルートの長さである。そしてヨーロッパ人のリーチの長さ!ヘルマン・ビールの本を読んだ人なら知っているはずだ。あのものすごいキャンプ間の距離!GNPの増大は、日本人の登山のリーチの長さにこそ結びつくべきなのだがーー。
 
 たとえば、アラスカやカナダの山へ行けば1日の日照時間はべらぼうに長い。1日20時間は明るい。とすれば20時間登り続けることができれば、テント間の距離は相当伸ばせるではないか。ヒマラヤでもそうだ。外国隊のAC間の距離を調べてみると、日本のそれは恥ずかしいほど短少なのである。何故か?オリンピックでもなんでも、スポーツ会ではいつも体力の不足をわれわれは歎く。だからでは済まない。ほかのスポーツなら、スキーなどを除き、少なくともゲレンデや練習場に彼我の差はあるまい。

 トレーニング場に差がなくとも、スポーツ界はなかなか勝てないで苦しんでいる。とすれば、登山のルートはこう道具が発達した現在、<継続>にしなかったら事実上レベルダウンにほかならない。涸沢や剣沢に幕営してちょこちょこ岩を登っても、それは三ツ峠などのゲレンデにいるのと少しも変わるところがないということになってしまう。

 そこでいま無積雪期にも<継続登攀>というのなら、私が提唱したいのは、少なくとも1泊、できるだけ2、3泊のビバークをともなう長大なルートの登攀をすることである。その間、できるならば下降をともなわぬルートを捜し、途中、水場はなくサポートもなしであること。サポートがどうしても必要なら、サポート隊は同ルートを追い、荷を吊り上げ、来た道を買えるといった、徹底した疑似大岩壁登攀をしてみることである。日本の山では2、3泊のビバークをともなうような組み合わせを創ることはむずかしいが、少なくとも1泊もビバークをともなわない<継続登攀>は、私には<継続>の名に値しないと思えるのである。
 
 他の稿で推薦ルートが紹介されるらしいから、私自身楽しみだが、もしどうしても長いルートがとれないなら、やむをえずBCを岩場からできるだけ遠のけ、リーチを伸ばすのも一法だろう。その意味では積雪期こそ、この国では<継続登攀>にふさわしいルートが多くとれる時期だと思う。
 
 ちょっとしたルートでも2、3泊のビバークがあるし、リッジ登攀も含めて十日くらいのルートはすぐに組める。そのくらいのコースがなければ、ヒマラヤのバリエーション時代を迎えるこれからの登山史にあって、われらが愛する日本の山々が、欧米のそれに比肩すべきゲレンデたり得ない。

 要はふるさとの山々をチンマリした箱庭化してはならないのだし、山のスケールは、ある意味で登る人間の英知でずいぶんと変わってくれるものなのである。そういう英知を現在日本の山々は必要としているともいえそうである。










< 岳人 278号(昭和45年8月発行) >


特集継続登攀<1>






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この記事へのコメント
なんでブログ書いたの?
と言われたら熱い想いがあるからですよね。
私も魚の外来魚問題では熱くなりますから
分かります。
私は登山をやらないので良く分かりませんが、
最後のくだりは分かる気がしました。

山猿山猿
2016年04月26日 08:19
御在所ロープウェイで山頂に行って

登山気分を満喫する僕には

遠い遠いお話!

アマゴンゾウアマゴンゾウ
2016年04月26日 10:08
こんにちは(・ω・)

海外と比べると大きく困難な山が少ない日本だけど
考え方や登り方でこじんまりしない困難が楽しめるんでしょうか

「登攀」が読めなかったいたちなので
ひとまず『神々の山嶺』を読んでみようかなと思いました(ノω`)

いたちいたち
2016年04月26日 12:38
こんばんは。

登山はしませんが
峠は昔よく行きました。
あとイッテQ登山部は
けっこー好きですよ。

わいちんわいちん
2016年04月26日 19:17
山猿さん こんばんは

ややこしい話ですね。
短時間で登れる山を、より困難な山に変えて登ると言う練習方法ですね。

今の時間は、何かの目標を達する為の練習ですね。
だからこそ練習は、簡単であってはならない。
目標を設定する事も大事です。

※※の見習い※※の見習い
2016年04月27日 01:10
アマゴンゾウさん こんばんは

オリンピックで言うところの金メダルを狙う人達の話しです。

御在所山頂で、ちょっと寒いからと言ってすぐに上着を着るのをガマンしたり、上着を着たから暑くなってもすぐに脱がないとか言う事です。
ちょっとの事はガマンするとこからです。

私も煙いのを”かなり”ガマンしてましたしね(笑)

※※の見習い※※の見習い
2016年04月27日 01:18
いたちさん こんばんは

今出来る事を困難化させるのは簡単です。
登山に限って言えば、道具や服を古いモノに変える事です。
マロリーさんやヒラリーさんが現代の道具を見たら”誰でも登れるね”って言いそうです。

※※の見習い※※の見習い
2016年04月27日 01:24
わいちんさん こんばんは

峠!私も中学の頃に通っていました。自転車で!(笑)

イッテQ登山部、私も見てました!
登れたのが驚きでした。

※※の見習い※※の見習い
2016年04月27日 01:26
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